こんにちは、響です。
《告別ソナタ》はナポレオンの侵攻によってウィーンを離れたルドルフ大公に捧げられた曲です。
また、ベートーヴェンが自ら《告別》と名をつけた、数少ない特別な作品としても有名です。
この曲では、まるで短い小説のように「別れ・不在・再会」が描かれているベートーヴェンの代表作のひとつ。
多くの人が“いつか弾いてみたい”と憧れる一曲です。
でも、
こんなふうに迷って、一歩を踏み出せない方も多いんです。
そこでこの記事では、
《告別ソナタ》がどんな曲なのか、難易度の目安や練習のヒント、楽譜の選び方までをやさしくまとめました。
読んだあとには「なるほど、挑戦してみようかな」と思えるはず。
大人になってからのピアノ時間にぴったりの一曲、ぜひ一緒にのぞいてみましょう!
《告別ソナタ》ってどんな曲?
それでは、《告別ソナタ》がどんな曲なのかお伝えしますね。
《告別ソナタ》が作曲されたのは1809年。
この年、オーストリアはナポレオンによる侵攻を受けました。
そのため、皇族たちはウィーンを離れることになりました。
ベートーヴェンと親交のあったルドルフ大公も、その一人だったのです。
「敬愛するルドルフ大公殿下の出発に際して。」と書き入れられた第1楽章。
それに続く第2楽章は「不在」、第3楽章には「再会」、「敬愛するルドルフ大公殿下帰還」と記されていいます。
まさに《告別ソナタ》は、「別れ・不在・再会」という物語を音楽で描いた特別なソナタ。
大公との絆や想いが込められているからこそ、今も多くの人に愛され続けているんですね。
聴く人には物語を、弾く人には挑戦する楽しさを与えてくれる──そんなベートーヴェンならではの一曲です。
この曲がどんな雰囲気か、まずは演奏で聴いてみましょう。
難易度はどのくらい?
《告別ソナタ》を弾いてみたいと思っている方は多いと思います。
その中で、一番気になるのは「どれくらい難しいの?」ですよね。
《告別ソナタ》はベートーヴェンのソナタの中ではやや難しめの部類に入ります。
ヘンレ社の難易度(1~9段階)では「7」。
つまり、中級と上級のちょうど境目あたりです。
演奏時間は17分ほど。
これくらいなら、「ちょっと頑張れば最後まで通せる」規模感といえます。
じっくり練習を積めば、十分にマスターできる一曲ですよ。
そして《告別ソナタ》には、ただの技巧を超えた物語を描く楽しさがあります。
第1楽章では別れの切なさ。
第2楽章では静かな不在の時間。
そして第3楽章で訪れる再会の喜び──。
これらを音で表現できたとき、聴き手にも深い感動が伝わります。
曲の中に含まれている“音楽のドラマ”こそ、《告別ソナタ》の大きな魅力です。

別れ・不在・再会をピアノで表現できるなんて素敵ですよね♪
弾いてみたいときの練習ポイント
《告別ソナタ》を弾くなら、テクニックと表現、両方を意識した練習がカギになります。
練習する時のポイントをいくつかお伝えしますね。
これらのことを意識すると、演奏の質が一段上がるはずです。
大変かもしれませんが、できることからやってみましょうね。
冒頭の「別れの和音」を大切に
《告別ソナタ》の冒頭を見てください。
冒頭の三つの和音に “Le-be-wohl(さようなら)” という言葉が書き添えられています。
ここをクリアに響かせることが、物語の出発点。
特に上声を丁寧に浮かび上がらせましょう。

この3つの和音で世界が始まると思うと、胸が高鳴りますよね♪
指番号を必ず決めて安定させる
《告別ソナタ》は繰り返しが多いソナタです。
弾くたびに使う指が違うなんてことありませんか?
この曲に限りませんが、運指がぶれると仕上がりが不安定になります。
《告別ソナタ》はその傾向が強い曲です。
練習の段階で必ず指番号を決めて、その通りに弾き続ける習慣をつけましょう。
第2楽章は「歌う」ことを意識
第2楽章は「不在」を描く静かな楽章。
ここは旋律を長く息でつなぐように歌わせることが大切です。
歌わせる、というと難しいと思うかもですよね。
鼻歌でいいので、メロディーを歌いながら練習してみてくださいね。
そうすると、旋律が伴奏に埋もれず自然と前に出ます。

ここは時間が止まったように感じて、音に身をゆだねてみてくださいね♪
再会の喜びを速さにのせて
終楽章は速いパッセージが続きます。
ここで、速さに振り回されると音が雑になってしまいます。
小さなフレーズごとに区切って練習しましょうね。ゆっくり→中速→全体通しの段階を踏むことで安定感が出ます。
ゆっくり→中速→全体通し
このプロセスで安定感が出ます。
再会の喜びがはっきりと伝わりますよね。
全体を通じて物語を描く
告別ソナタは「別れ → 不在 → 再会」の物語を体験するような構造。
技術的な練習は確かに大切です。
でも、物語の流れも意識してみましょうね。
演奏に説得力が増しますよ。

最後に再会の光を思い切り響かせてください。
長い旅の果てに帰ってきた喜びが伝わりますよ♪
楽譜を選ぶときのヒント
《告別ソナタ》の楽譜といっても、国内外の出版社からいろいろ出ています。
日本では全音版や音楽之友社版、海外ではペータース版やベーレンライター版などもあります。
それぞれに特徴がありますが、《告別ソナタ》を弾いてみたいと思ったときにまず迷うのは「全音版」と「ヘンレ版」でしょう。
この2つは入手のしやすさと信頼性の点で、特に多くのピアニストや学習者に選ばれています。
全音版
メリット
デメリット
ヘンレ版
メリット
デメリット
“別れと再会”を音で味わうひととき
ここまで《告別ソナタ》についていろいろお伝えしてきました。
ここで最初からのお話を簡単にまとめてみますね♪
《告別ソナタ》は、ただの技巧を競うための曲ではありません。
そこに込められているのは、敬愛する大公との別れと不在、そして再会の喜び。
ベートーヴェン自身が名付けた作品であることも、その特別さを物語っています。
演奏者にとっては難易度のハードルを超えたときに、音楽で物語を描ける達成感があります。
聴き手にとっても、ピアノが語る物語に心を重ねる時間は忘れがたい体験になるでしょう。
“別れと再会”を音で味わうひととき。
このソナタを通じて、ベートーヴェンの音楽に込められた深い人間的な感情を、ぜひ感じ取ってみてください。
冒頭でご紹介したアシュケナージの演奏ってステキですよね。
でも、もう少し落ち着いた解釈で聴いてみたい。
そんな方には、ブレンデルの演奏もおすすめですよ♪

結局、音楽って“歌うように奏でる”ことなんですよね♪
最後まで読んでくださって、ありがとうございました。